なぜ、早期発見・早期治療をいくらやっても、がんで死ぬ人は増える一方なのか。
なぜ、手術が「成功」しても、抗がん剤でたたいても、がんはすぐ再発するのか。
なぜ、「余命3ヶ月」と宣告されたのに、3年も4年も元気な人がいるのか。
私は大学病院の外来で「がんを治療しない」患者さんを150人以上、23年間、診てきました。
理論の裏づけがとれたので、これを「がん放置治療」と名づけました。
がんは痛みなどの症状がない限り、そっとしておくのがいちばんラクに長生きできる。
これは世界で最も新しく最善の、がんへの対処法と自負しています。
恐ろしいがん治療
日本人の2人に1人が、がんにかかり、3人に1人が、がんで死んでいます。
医学は日進月歩しているはずなのに、がんでなくなる人は増える一方です。
人々を震えあがらせる死霊の正体は「がん」ではない。
「がん治療」が、世にも恐ろしいのです。
患者はがんの手術で痛み、抗がん剤の毒に苦しみぬいて、みるみるやつれ果てて死んでいるのです。
痛みや苦しみがないなら、うかつにがんの治療を始めないことです。
がんの治療で殺されないためのキーワードが、「がんもどき」です。
「がんもどき」で人は死なない
がん細胞はウイルスでもインベーダーでもなく、「身内」です。
タバコ、大気汚染、農薬、放射線などの発がん物質によって遺伝子が傷つき、自分自身の正常細胞が少し変異して、がん細胞が生まれます。
がんは「臓器移転のある本物のがん」か「移転のないがんもどき」の2つに1つです。
「本物」が「もどき」かは、幹細胞によって決まります。
がん幹細胞が生まれた瞬間に、そのがんの性質が、決まっているわけです。
「本物のがん」は幹細胞が生まれてすぐ、0.1ミリ以下のときから、血液にのって全身に転移し始めることを、臨床データが教えてくれます。
幹細胞が生まれてから10年~30年もたち、がん細胞は10億個にも増えて、全身に移転がひそんでいる状態です。
だから、本物のがんは、いわゆる「早期発見」でいくら切り取っても、モグラたたきのように再発する。
一方、「がんもどき」には転移能力がなく、大きくならなかったり、自然に消えることもよくあります。
おとなしくて、人を殺せるほどの勢いがないわけです。
乳がんのほとんどは「がんもどき」
「がんもどき」は、無数に存在します。
マンモグラフィだけで見つかる乳がんは、99%、「がんもどき」。
前立腺がんも、検査が普及して、「患者」が昔の30倍にも増えています。
しかし、PSAで見つかった前立腺がんの9割以上は「がんもどき」です。
日本人の3人に1人は、甲状腺がんが見つかりますが、これも99%「がんもどき」。
甲状腺がんで亡くなる人は、がん死全体の1%もいません。
胸部CT検査で見つかるスリガラス状の肺がんも99%、「がんもどき」。
「早期発見・早期治療で、がんが治る」というのはまっ赤なウソ。
痛くもつらくもないのに検診や人間ドッグで見つかるのは、ほとんど「がんもどき」。
これをまず、頭に入れましょう。
「本物のがん」でも簡単に死なない
実はがん自身は痛まないし、毒素も放ちません。
ただひたすらがん細胞が増え続け、転移・増大するのが、がんです。
人ががんで死ぬのは、肺、胃、食道、肝臓、脳などの重要な臓器でしこりが増大して、呼吸、食事、解毒などの「息の根」を止めるから。
たとえば乳房でがんがどんなに大きくなっても、重要な臓器への転移がなければ、死に至ることはないのです。
がんの増大スピードは、意外にゆっくりです。
「ゆっくりいこうよ」とがんに語りかけながら、痛みやつらさだけはしっかりケアして、1日1日を着実に生きていくことが大切です。
がんは安らかに死ねる病気
がんは本来、とても安らかに死ねる病気です。
原理的に、がんを放置すれば、痛まず、苦しまずに死ねるようになっています。
私が診てきた「がん放置患者」たちも、痛みで七転八倒したという話は皆無。
もし痛んでもモルヒネなどでしっかりコントロールして、安らかに人生をしまわれています。
ふつうに暮らしながらすこしずつ弱っていき、最期に意識が薄れて永眠。
これは、多くのがん死に見られるパターンです。
がんは自分の一部
がんは遺伝子に傷がついて、正常細胞がちょっと変化して育ってくる「自分自身」。
性格と同じように、千人千色と言えるほど個性豊かです。
手術や抗がん剤治療をしなければ、とても穏やかに逝けます。
対処を間違えなければ、最後まで頭がはっきりしています。
私の究極の夢は、がんを治療しないで、痛みだけ抑えて、「ありがとう」と言ってあの世に旅立つことです。
「がんもどき」で早死にする人、「本物のがん」で長生きする人 | ||||
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近藤 誠
http://www.kondo-makoto.com/
1948年生まれ。73年、慶應義塾大学医学部卒業。同年、同大学医学部放射線科入局。79~80年、米国へ留学。83年より同大学医学部放射線科講師。がんの放射線治療を専門とし、乳房温存療法のパイオニアとして知られる。患者本位の治療を実現するために、医療の情報公開を積極的にすすめる。2012年第60回菊池寛賞受賞
2 comments
私も、もしがんになったとわかったら、痛みだけ軽減してもらうことにして
抗がん剤や手術などはしないで 静かに、穏やかな気持ちで最期を迎えたいと思っています
(なので、がんなどの検査は一切受けていません^^)
主人も同じ考えなので、どちらかががんだとわかった場合は、
隠さずに、ちゃんと告知してもらい、残された人生を精一杯生きる覚悟はできています。
少しでも長く生きてほしい、というのは 実は残された人間のエゴでもあったりしますので
私たち夫婦は お互いの寿命を尊重して(尊厳死) 無意味な延命治療や
数パーセントの成功にかけるような無謀な手術や治療はやめようね、って話しています。
『死ぬる時節には死ぬがよく候』・・・良寛さんのことばです。
Author
Juliaさん
私も癌になったら、治療をせず受け入れます。
家内も同意見です。
身体を切ったり、抗がん剤は恐ろしいですからね。
それを運命として受け入れ、一日一日を大切に生きていきたいと思っています。
『死ぬる時節には死ぬがよく候』良寛さんのことば
素晴らしい言葉です!
名言で取り上げたいと思います。
ありがとうございます。