「美しいお経」瀬戸内寂聴

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「美しいお経」瀬戸内寂聴

 

「三帰依文」 仏に帰依する誓い

ブッダム・サラナム・ガッチャーミ
ダンマム・サラナム・ガッチャーミ
サンガム・サラナム・ガッチャーミ

自帰依仏   じきえふ
自帰依法   じきえほう
自帰依僧   じきえそう

私は仏に帰依します
私は法に帰依します
私は僧に帰依します

『三帰依文』といって、人々が仏に帰依することを誓う祈りの言葉です。

仏教では、「仏」「法」「僧」の三つを信仰の根本として大切にします。

仏はブッダ。

法はダルマ。

僧はサンガです。

帰依とは、身も心も捧げますということ。

理屈ぬきで信じるということです。

 

「懺悔文」 仏前であげるお経

我昔所造諸悪業   がしょくしょぞうしょあくごう
皆由無始貪瞋痴   かいゆうむしとんじんち
従身語意之所生   じゅうしんごいししょしょう
一切我今皆懺悔   いっさいがこんかいざんげ

『懺悔文』

仏前で勤行する時、まずあげます。

私が昔から造ってきたすべての悪い行いは、いつから始まったともしれない、はるかな昔から私に具わった「貪」(むさぼり)と「瞋」(いかり)と「痴」(おろかさ)が原因となり、体と言葉と心が生んだものです。
私は過去のこれらの罪のすべてを今こそ、心からみ仏に懺悔します

貪、瞋、痴は、三毒といって、貪欲、瞋意(しんに)、愚痴ともいい、人間の心に生まれた時から巣くっている悪の素です。

 

「観音経」 気分が落ち込んだ時には

妙音観世音   みょうおんかんぜおん
梵音海潮音   ぼんのんかいちょうおん
勝彼世間音   しょうひせけんのん
是故須常念   ぜこしゅじょうねん

『観音経』偈の一節

観世音は妙音であり 梵音であり 海潮音である
それは世間のあらゆる音にすぐれている
それ故に常に念じなさい

観音さまは衆生の現世の抜苦与楽をかなえて下さる仏さまです。

妙音とは、この世の森羅万象のかなでるすべての美しく快い音です。

 

「観音経」 幸福の海に浮かぶような気分に

具一切功徳   ぐいっさいくどく
慈眼視衆生   じげんじしゅじょう
福聚海無量   ふくじゅかいむりょう
是故応頂礼   ぜこおうちょうらい

『観音経』偈の一節

観世音は一切の功徳を具えて
慈しみの眼によって衆生を見られる
福聚が海のように無量である
それだから、足を額に頂いて礼拝しなさい

 

空海 仏教の極意とは

仏心は慈と悲なり
大慈は則ち楽を与え
大悲は則ち苦を抜く

弘法大師空海の言葉

仏のみ心は慈と悲です。
仏の大いなる慈しみは人々に楽しみを与え、仏の深い悲れみは人々の苦しみを抜き去ってくださいます。

仏教の極意は一言でいえば慈悲につきます。
人の世の抜苦与楽が、仏の大いなる悲願です。

 

無常を歌う「いろは歌」

いろはにほへどちりぬるを
わがよたれぞつねならむ
ういのおくやまけふこえて
あさきゆめみしゑひもせず

色は匂へど散りぬるを
我が世誰ぞ常ならむ
有為の奥山今日越えて
浅き夢見じ酔ひもせず

伝・弘法大師

「いろは歌」と呼ばれている四十七文字のこの歌は、無常を歌っています。

昔から弘法大師の作といわれていましたが、本当は作者はわかっていません。

 

「念仏法語」 人間に生まれたありがたさ

夫れ一切衆生、三悪道をのがれて
人間に生るること大なるよろこびなり

惠心僧都源信『念仏法語』

惠心僧都源信の『念仏法語』の中の最初の言葉です。

人間に生まれることをわれわれは当然のように思っているが、惠心僧都は、人間に生まれたからこそ、仏の教えにめぐりあい、仏の智慧に照らされて、命の尊さ有り難さに目覚め、生きる意味を知ることができるというのです。

 

「四弘誓願」 菩薩の誓いの言葉

衆生無辺誓願度   しゅじょうむへんせいがんど
煩悩無尽誓願断   ぼんのうむじんせいがんど
法門無量誓願学   ほうもんむりょうせいがんだん
仏道無上誓願成   ぶつどうむじょうせいがんじょう

『四弘誓願』

すべての菩薩が起こす誓いの言葉なので「総願」とも呼ばれます。

限りなく存在するすべての生きものを救うことを誓います。

尽きることない多くの煩悩を断つことを誓います。

無量にある仏の教えをすべて学ぶことを誓います。

この上ない最上の仏道を修し悟りを成就することを誓います。

 

『山家学生式』 己を忘れて他人のために

悪事を己に迎え
好事を他に与え
己を忘れて他を利するは
慈悲の極なり

最澄『山家学生式』

悪いことは自分が引き受け、好いことは他の人に与え、自分のことは忘れて他人の幸せを図るのは、慈悲の最高のものです。

 

「涅槃経」 すべてのものに仏性がある

一切衆生悉有仏性   いっさいしゅじょうしつうぶっしょう

『涅槃経』

この世にいきているすべてのものには、本来仏性が具わっている。

 

「光明真言」 マントラの不思議な呪力

オン アボキャ ベイロシャノウ マカボダラマニ ハンドマ ジンバラ ハラバリタヤ ウン

『光明真言』

真言とはサンスクリット語の「マントラ」訳語で、呪、神呪などとも訳されます。

密教では梵字を重んじ、真言を大切にします。

真言、陀羅尼には不思議な呪力があり、正しく称えるなら、煩悩を追い払い即身成仏もできるといわれています。

神仏など超越的な存在にも、真言の呪力が働きかけると信じられています。

「光明真言」は、仏前でも広く称えられています。

 

 

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瀬戸内寂聴(せとうち じゃくじょう)
http://www.jakuan.jp/
1922年徳島県生まれ。東京女子大学国語専攻部卒業。63年に『夏の終わり』で女流文学賞、92年『花に問え』で谷崎潤一郎賞、96年『白道』で芸術選奨文部大臣賞を受賞、97年には文化功労者に選ばれる。98年『源氏物語』現代語訳全10巻を完結。2001年『場所』で野間文芸賞を受賞。06年、文化勲章を受ける。07年には世阿弥の生涯を描いた『秘花』を上梓した。1973年平泉中尊寺にて得度。

 

 

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