日本人は、従来、思いやりと感謝の心を持った民族でした。
その底を流れていたのは「ありがとう」「おかげさま」という感謝の思いでした。
「おかげさま」のもともとの意味は「ご先祖さま」なのです。
すでに亡くなられて、そうして陰に隠れている方々の庇護のもとで、その協力をいただいて、いま私たちは生かされている。
そのことに感謝の気持ちを差し上げるのが「おかげさま」(お陰様)という言葉なのです。
自分は一人で自立して生きていると感じているかもしれませんが、私たちには両親がいます。
その両親にはそれぞれ二人ずつ四人の親がいます。
そうして10代さかのぼると1024人、20代さかのぼると100万人を軽く超えるご先祖様がいるのです。
そのうちの一人でも欠けていたら、いまの自分はありません。
ご先祖様が欠けることなく命をつないできてくれたからこそ、いまここに命をいただいた自分がいる。
そう考えたら、一人で生きているのではなく、ご先祖様のお蔭で生かされている、という気持ちにならないでしょうか。
枡野俊明