「トランスパーソナル心理学入門」諸富祥彦

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すべて意味がある

 

すべて意味がある

この人生のすべての出来事には意味がある。

たとえそれが、不治の病、人間関係の問題などの否定的な出来事であっても。

単なる偶然としか思えない出来事であっても、そこには意味があり、私たちに何か大切なことを教えてくれるのです。

自分への執着を捨て、自分の幸福について思い煩うのをやめる。

そして、「この人生で自分が果たすよう呼びかけられている何か」にただひたすら取り組んでいく。

そうすれば、「なすべき時に、なすべき所で、なすべきことをしている」という「生きる意味の感覚」が満ち溢れてくるはずです。

その結果、真の幸福、真の自己実現も自ずと手に入ることになるのです。

人生には、こんな幸福のパラドックスが存在するのだと、トランスパーソナル心理学では言うのです。

 

自力+他力の心理学

これまでの心理学は、「自己決断」「自己実現」といった価値を重んじる心理学でした。

それはいわば「自力の心理学」でした。

一方、トランスパーソナル心理学には、「自分を超えた向こう」からやってくる何らかの力、何らかの声を招き入れ、大切にしていくことから「他力の心理学」という面があります。

従来の心理学を含んで超えるという意味で、トランスパーソナル心理学=「自力+他力の心理学」と言っていいかもしれません。

 

自分へのこだわりを捨てる

個を超えたつながり。

それは、みずからの心や魂とのつながり。

思想信条の違いや性差・人種の違いなどを超えた人と人のつながり。

過去の世代や将来の世代とのつながり。

あらゆる生きとし生けるものとのつながり。

この母なる大地と大自然、地球生命圏とのつながり。

そして私たちをその一部として含むこの宇宙そのものとのつながり……。

トランスパーソナル心理学では、「自分へのこだわり」を捨てて、こうした「個を超えたつながり」を生きよ、と説くのです。

 

個を超えたつながり

現代人が抱える心の傷や魂の渇き、寂しさや虚しさなどの多くはどこからくるのでしょうか。

それは「つながり」を見失い、個人が「バラバラ」になってしまったことから生まれてくるのです。

現代人の歪んだ生き方を根本から変革することは、この「個を超えたつながり」の回復によってしか成し遂げられえない、とトランスパーソナル心理学では考えます。

「個を超えたつながり」を回復しなければ、本物の癒しは起こりえないというわけです。

 

「自分」を持つために必要なもの

私たち一人一人が安心して「ひとり」になることができ「自分自身」でいられる、そんな「つながり」の存在。

他者にも自分自身にもイエスと言うことのできる、安心できる関係。

そこにいるすべての人が、それぞれ、自分自身にとって「中心」でいることができるつながり。

他者の権利を侵害せず、それぞれの「違い」を認めあい尊重しあえる、そんなつながり。

このような「つながり」こそが、トランスパーソナル心理学が目指すものなのです。

 

自分を癒すために

トランスパーソナル心理学の基本コンセプトは、トランスパーソナル=個を超えたつながり=個が生きるつながり。

人間の心というのは不思議なものです。

「私は傷ついている」「私は癒されたい」と「私の癒し」にこだわっているうちは、いつまでたっても本当には癒されないのです。

皮肉なことに、「他人の癒し」「世界の癒し」「地球の癒し」に熱中して、「自分の癒し」のこと忘れてしまっていると、その結果いつの間にか自分も癒されていた、といったことがしばしば起こります。

 

「私の癒し」と「地球の癒し」

トランスパーソナル心理学では、他人の痛み、地球の痛みを自らの痛みとし、この社会の歪みをみずからの歪みとして引き受けるような世界に開かれたあり方、そんな険しい道をあえて目指すのです。

私たちに今求められているのは、私たちの内と外、「精神世界の変革」と「社会変革の運動」とを一つの流れと見て、同時に働きかけていくことです。

「私の癒し」と「世界の癒し」そして「地球の癒し」のつながり。

うちなる私の変革(自己変革)と外側の世界の変革(社会変革)の同時進行。

この新たなムーヴメントの理論的な支えとなるのが、「個を超えたつながり」を説くトランスパーソナル心理学です。

 

 

トランスパーソナル心理学入門 (講談社現代新書)

諸富 祥彦 講談社 1999-08-20
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諸富祥彦(もろとみよしひこ)
http://morotomi.net/
1963年、福岡県生まれ。筑波大学大学院博士課程修了。現在、千葉大学教育学部助教授。教育学博士。臨床心理士。日本トランスパーソナル学会会長。著書に、『どんな時も人生に“YES”と言う』――大和出版、『フランクル心理学入門』――星雲社、現代新書にも、『<むなしさ>の心理学』がある。

 

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2 comments

    • Julia on 2013年11月8日 at 9:29 PM
    • Reply

    この本!もうだいぶ前に市立図書館の本棚に並んでいたのを 
    ふうっと引き寄せられるようにして手に取って借りていったのですが、
    読んでみてさらに、新しい考え方にものすごく感動した思い出があります・・。
    これも、私の「今」をつくってくれた貴重な一冊です・・。
    久しぶりに思い出しました・・・。ありがとうございます♪

    1. Juliaさん
      この本も読まれていたのですね。
      この本はかなり古い本で、掲載するかちょっと考えましたが、読み返してみても十分読み応えあるので、アップしました。
      確かに、貴重な一冊ですね。
      コメントありがとうございました。

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