『古事記』は、我が国に現存する最古の歴史書です。
天武天皇(在位673~686年)が発案し、稗田阿礼が、天皇の系譜、事績、そして神話などを示した『帝紀』『旧辞』と呼ばれる書物を誦習し、それを太安万侶が四か月かけて編纂し、元明天皇の御代の和銅5年(712年)に完成し、天皇に献上されました。
上・中・下の全三巻に分かれ、原本は存在していませんが、後世の写本が現在に伝わっています。
ちなみに平成24年(2012年)は『古事記』完成から1300年の年回りに当たりました。
三巻のうち、上巻は神の代の物語、中間は神と天皇の代の物語、そして下巻は天皇の代の物語となっています。
『古事記』の目的は、天皇の根拠を明らかにし、それを子々孫々に伝えることにあります。
『古事記』を読むことは、天皇の由来を知ることであり、それはすなわち、日本とは何か、そして日本人とは何かを知ることでもあります。
そして、『古事記』を読むことで、日本人の自然観、死生観、歴史観が分かってきます。
日本人の伝統的な精神である「大和心」を知ろうとしたら、『古事記』を読むのが確実の方法ではないでしょうか。
同じ時代に編纂された歴史書『日本書紀』があります。
内容的には『古事記』とかなりかぶる部分が多いのですが、編集方針の違いから、細部には異なる点も多くあります。
『日本書紀』は正史であり、対外的に用いられていたと考えられています。
それに対して『古事記』は国内向けに用いられたと考えられています。
江戸時代の国学者・本居宣長は、『古事記』を古代日本人の心情が現れた最上の書と評価しています。
近年は多くの人が日本人としての誇りを再発見しようとしている傾向がありますが、日本のことを知ろうとしたら『古事記』を読むのが一番よいとも思っています。
現代語古事記: 神々の物語 (学研M文庫) | ||||
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竹田恒泰(たけだつねやす)
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1975年、旧皇族竹田家に生まれる。明治天皇の玄孫。慶應義塾大学法学部卒業。現在は同大学講師。2006年、『語られなかった皇族たちの真実』で第15回山本七平賞を受賞。現在、テレビ・雑誌・ネットなどの各種メディアで活躍中。