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「掃除道 ― 会社が変わる・学校が変わる・社会が変わる」鍵山秀三郎

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掃除道

 

 

私は、会社創業以来44年間、徹底した掃除の実践に取り組んでまいりました。

掃除を通じて、気づき、学んだことがたくさんあります。

荒んだ人の心を落ち着かせ、穏やかにするためには、掃除をしてきれいにすることがもっとも効果的であるということを実感してきました。

穏やかな人が多くなれば、犯罪につながる事件など起こりようがありません。

まず「掃除で美しい生活環境を保つ」。

このことこそが日本を再生するための隠れた大きな力になると確信しています。

 

社内におけるもっとも顕著な変化

当社の場合、会社の歴史が掃除の歴史だったといっても過言ではありません。

それくらい、掃除に力を入れて会社経営に携わってまいりました。

掃除と取り組み続けてきたことでも、もっとも顕著な変化があったのは、社風がよくなったことです。

掃除は普通、共同作業で行います。

共同作業には、連帯感と協調性を高める効果があります。

自分たちの職場を、共同作業できれいにすることによって、自然に連帯感と協調性が育まれていきました。

その結果、社内の人間関係がよくなったからだと思います。

だからといって、掃除をしてすぐ儲かるというようなことはありません。

ただ、掃除をして環境をきれいにすると、職場の雰囲気が穏やかになります。

穏やかな環境は、心の荒みをなくし、怒りを抑える効果があります。

たとえ会社の経営が厳しい状況にあったとしても、社員の表情が明るく生き生きとしています。

家族や周囲の人に対して優しく気遣うようになります。

掃除には、単に周囲がきれいになるという効果だけではなく、人間を根底から変える力があるようです。

とくに、逆境のときは身の周りをきれいにしておくと、救われるような気持ちになります。

 

掃除を継続する極意

掃除は、毎日掃除をするからこそ意味があります。

私は、毎日の掃除を通じて、積み上げることの大切さを体感し、学ぶことができました。

継続して掃除をする習慣を定着させるには、掃除の基本があります。

1. 掃除道具をキチンと揃える

2. 掃除道具の置き場所を決める

3. 工夫しながら掃除をす

以上のことが周知徹底できるようになると、掃除をする習慣が自然に定着するようになります。

 

外周りの掃除

会社は、その地に社屋を構えたときから、大なり小なり周囲の住民に迷惑をかけるものです。

会社を経営するうえにおいて、迷惑を避けることができないのであれば、他の何かでお返しできないものかということをいつも考えるようにしてきました。

そういう考えが根底にあって始めたのが、近隣外周りの道路掃除です。

 

洗車を徹底する

車で会社を出るときは、必ず洗車してから出かけることを徹底しています。

洗車を徹底するようになった理由は、二つあります。

一つは、事故を減らしたいという願い。

もう一つは、お客様(取引先)から尊重されたいという強い思いからです。

かつて、忙しいことを理由に汚れたままの車で出かけていた時代がありました。

そのころはよく車が故障し、事故も頻繁に起こしていました。

車をきれいにするようになってから、見事に車の故障が激減し、事故もほとんどなくなりました。

車をきれいにすることで、運転する社員の心が穏やかになった効果です。

このことは、予想以上の大きな発見でした。

また、会社はお客様から必要とされ尊重されて初めて存在意義があります。

お客様から尊重されるためには、こちらからお客様を尊重する姿勢を示すことです。

その具体的な実践の一つが、きれいな車でお客様を訪問することではないかと思います。

 

トイレ掃除

トイレ掃除は、創業以来、私がもっとも熱心に取り組んできたことの一つです。

当社のトイレ掃除は、普通では考えられないほど徹底して行っています。

しかも、ただ掃除をするのではなく、いかに少ない水で早くきれいに仕上げるかということをいつも念頭において、工夫改善しながらやり続けてきました。

トイレ掃除は、素手で行います。

素手のほうが、髪の毛一本まで直接感じ取ることができるからです。

敏感な指先から直接感じることが、問題解決の早道だと信じているからです。

徹底した掃除をしますと、掃除をする前と後では明らかにその場の雰囲気が変わってきます。

トイレ内には清々しい「氣」がみなぎり、自分自身の心もさっぱりとしたいい気分になります。

この気分は、体験した人だけが味わえる、まことに不思議な世界です。

 

トイレ掃除がなぜ重要か

1. 謙虚な人になれる
どんなに才能があっても、傲慢な人は人を幸せにすることはできません。
人間の第一条件は、まず謙虚であること。
謙虚になるための確実で一番の近道がトイレ掃除です。

2. 気づく人になれる
世の中で成果をあげる人とそうでない人の差は、無駄があるか、ないかです。
無駄をなくすためには、気づく人になることが大切。
その「気づき」をもっと引き出してくれるのがトイレ掃除です。

3. 感動の心を育む
感動こそ人生。
できれば人を感動させるような生き方をしたい。
そのためには自分自身が感動しやすい人間になることが第一です。
人が人に感動するのは、その人が手と足と身体を使い、身を低くして一所懸命取り組んでいる姿に感動する。
人のいやがるトイレ掃除は最良の実践です。

4. 感謝の心が芽生える
人は幸せだから感謝するのではない。
感謝するから幸せになれる。
トイレ掃除をしていると、小さなことにも感謝できる感受性豊かな人間になれます。

5. 心を磨く
心を取り出して磨くわけにいかないので、目の前に見えるものを磨く。
人のいやがるトイレをきれいにすると、心も美しくなる。
人は、いつも見ているものに心も似てきます。

 

掃除で会社が変わる

「掃除に学ぶ会」が初めてが発足したのは、平成5年11月のことでした。

永年続けてきた掃除の実践を通じて、人間としての生き方を学ぼうという有志の方々が中心になって結成されたものです。

そのきっかけになったのは、東海神栄電子工業の社長田中義人さんとの出逢いでした。

田中さんの会社は、プリント配線基板を作っている会社です。

仕事柄、機械は錆つき、床もかなり汚れていました。

私が最初に会社を訪問したとき「こう工場が汚れていてはいい製品はできませんでしょう」「必ず、不良品が出ますよ」と申し上げました。

現に不良品が多発していたようです。

にもかかわらず、田中さんから返ってきた言葉は、「業界の宿命ですから」というものでした。

それに対して私は、「そんなことはないと思います。

機械も工場も、きれいにすれば、必ず不良率は下がります」と、掃除してきれいにすることを強くお勧めしました。

社長の田中さんは感じるところがあったのでしょう。

日時を置かずに、当社の東京本社までわざわざ掃除研修に来られたのです。

その後、矢継ぎ早に社員を派遣され、とうとう全社員を当社の掃除研修に寄越されました。

工場がきれいになるにしたがって、製品の不良率も激減し、ついには業界の平均をはるかに下回るまでになりました。

また、何かというと責任のなすり合いをしていた営業部門と製造部門の関係が、円滑にいくようになりました。

さらに、夜遅くまで残業続きだった仕事が、定時で退社できるまでに改善されたのです。

もちろん、機械の耐用年数も延び、仕事の質も格段に高まりました。

その結果、会社の業績が向上したことは、改めて述べるまでもありません。

 

「掃除に学ぶ会」発足

平成7年の時点で設立された「掃除に学ぶ会」は、日本大正村、大阪、千葉、長崎、神奈川の五ヵ所。

将来の発展を見据え、「日本を美しくする会・各地掃除に学ぶ会」と名称を統一しました。

以来、「掃除に学ぶ会」の運動は各地に広がり、平成17年3月31日現在、日本全国47都道府県のすべてに「掃除に学ぶ会」が設立され、開催されるまでになりました。

登録されているだけでも日本国内に98ヵ所があります。

また外国ではブラジル、中国、モンゴル、ニューヨーク、台湾までその輪が広がってきました。

この会の趣旨は、掃除の実践を通じて、自分たちの心を磨がせていただこうというものです。

とくに、トイレ掃除を通じて「心の荒み」と「社会の荒み」をなくすことを目指しています。

会場は原則として公共施設や学校を借りて、トイレを中心に掃除を行います。

入会資格はなく、どなたでも自由に参加できます。

 

 

 

 

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鍵山秀三郎(かぎやま・ひでさぶろう)
日本を美しくする会 掃除に学ぶ会
昭和8年、東京生まれ。昭和27年、疎開先の岐阜県立東濃高校卒業。昭和28年、デトロイト商会入社。昭和36年、ローヤルを創業し社長に就任。平成9年、社名をイエローハットに変更。平成10年、同社取締役相談役となる。創業以来続けている「掃除」に多くの人が共鳴し、近年は掃除運動が内外に広がっている。「日本を美しくする会」相談役。著書に、『凡事徹底』『鍵山秀三郎語録』『小さな実践の一歩から』『日々これ掃除』『掃除に学んだ人生の法則』(以上、致知出版社)、『鍵山秀三郎「一日一話」』、日めくりカレンダー『鍵山秀三郎 凡事徹底』、CD『鍵山秀三郎 感動の講話集』(以上、PHP研究所)などがある。

 

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