人間が生きるということはどういうことかといつも考える。
すると死ぬことだということに帰着する。
死ぬとわかれば今日この一日を十分に生きねば損だと思う。
キザな言い方だが、講演するときもこのあと私はきっと死ぬのだと自分に言い聞かせることにしている。
するとその講演に命をかける。
二時間がまるで20分ぐらいの勢いでしゃべってしまう。
講演の後は汗でびっしょりだ。
けれども不思議なことにこの方が疲れない。
思いっきりやったという私だけの満足感が疲れを忘れさせる。
淀川長治