マンガ・アニメが席巻し、世界はいま空前の日本ブーム。
しかし理由はそれだけではない。
食文化、モノづくり、日本語、和の心、エコ、あらゆる日本文化に好意が寄せられている。
「クール・ジャパン」の源流を探ると、古代から綿々と伝わる日本文明の精神、そして天皇の存在が見えてくる。
日本は美食天国
今や日本は美食天国として世界に認知されている。
『ミシュランガイド』が東京に世界でいちばん多くの星を付けたことは決定的だった。
物事を徹底的に突き詰め、道を究めようとする姿は、料理の世界でも同じで、日本料理は料理ごとに専門化してきた。
日本の板前が備える技術は、何百年もの間、継承され、代々積み上げられた技術であることもある。
日本人は世界各国の料理を採り入れ、日本独自のかたちに進化させ、自他共に認める日本料理に昇華させてしまうのである。
古来、日本人にとって食事をすること自体が神事だった。
食事は神からの賜り物で、料理はいったん神に供え、祈りを捧げてから、お下がりとして頂くものだった。
料理そのものがすでに神なのである。
食事を神と考える日本人の感覚も、日本人が料理を究めた一つの要素ではないだろうか。
日本人のモノづくりの源流
日本人は、他国がとても真似できない究極の製品を作り上げることがよくある。
日本人のモノづくりの源流を探っていくと、最終的には旧石器時代にまで時間を遡ることになる。
約三万年前から最先端の石器を製作する技術を持った集団だったことが想定されるのである。
そこに、日本人のモノづくりの起源を見出すことができるのではないか。
世界四大文明などと呼ぶ場合があるが、世界最古の土器が日本であるなら、日本こそ世界最古の文明であると定義されるべきではなかろうか。
日本語は神の言葉
日本語は縄文時代には日本列島に存在していて、縄文時代以前の古い要素を色濃く残している。
神道の考えによると神武天皇より前は神世の時代であるから、日本語は高天原に通じる「神の言葉」ということになる。
日本列島に最初の統一王朝である大和王朝が成立して以来、日本人は一つの言語を共有して結束してきた。
日本では子供でも、『万葉集』や『古今和歌集』などに収録された古代の和歌を原文のまま読むことができる。
しかも、日本人であれば建国以来二千年に及ぶ文書類を読むことができる。
これは奇蹟に近い。
もし、英国人や米国人が古代の文献を読もうと思っても、原文をよみたければ、古代ギリシャ語や古代ヘブライ語などを習得しなくてはならない。
日本語は原始日本人の価値観を詰め込んだタイムカプセルのようなものなのではないか。
古い言語が残るからこそ、古い時代の価値観が現代に継承されているのであり、言語なくして価値観の継承はありえない。
日本語は、大自然との調和を重んじた縄文人の発想を世界に伝える道具として今、機能しているのである。
日本語こそ世界遺産に相応しいと思う。
人は神の子孫
日本人が神聖性を見出してきたのは、木だけではない。
山には山の神、海には海の神を観念し、万物に霊性を見出し、花弁一枚一枚にも神の姿を見ていた。
神道において、神とは主に大自然のことを意味する。
日本の伝統的価値観によると、「人は神の子孫」であるとされてきた。
神の子孫とはすなわち、「人は大自然の子孫」であることを意味する。
天皇 すめらぎ
日本は「神の国」である。
日本文明を考えるとき、天皇の存在を語らずに済ませることはできない。
天皇の存在は日本文明の基礎を成し、また日本人の意識のなかに存在しつづけてきた。
2600年以上の長きにわたり、神武天皇の男系の子孫が脈々と皇位を継承し現在に至る。
これを「万世一系」という。
現在の天皇陛下は第百二十五代であらせられ、百代以上続く王朝は世界で他に例がない。
しかも、日本は王朝だけでなく国家としても断絶は見られない。
天皇は祈る存在であり、国民一人ひとりの幸せをお祈りになる。
これが神事であり、現在は主に宮中祭祀として続けられている。
日本の皇室が二千年以上続いたのは偶然ではない。
天皇(すめらぎ)が安泰ならば、我が国は大丈夫なのである。
ジャパン・ルネッサンス
我が国は二千年以上王朝の交代がなかった。
世界に現存する国家のなかで最古の国家といえる。
今、失われてしまった日本文明を取り戻したとき、日本はかつての輝きを取り戻すだろう。
日本人が立ち返るべきは戦前や古代ではなく、縄文時代以降、悠久の歴史のなかで積み上げられた日本文明が、その頂点を極めた維新前夜ではなかろうか。
日本人が維新前夜に立ち戻り、当時の気概を取り戻すことが『日本文明復興 ジャパン・ルネッサンス』なのである。
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竹田 恒泰
http://www.takenoma.com/
昭和50年(1975)旧皇族・竹田家に生まれる。明治天皇の玄孫にあたる。慶應義塾大学法学部法律学科卒業。専門は憲法学・史学。作家。慶應義塾大学法学研究科講師(憲法学)として「特殊憲法学(天皇と憲法)」を担当。平成18年(2006)に著書『語られなかった皇族たちの真実』(小学館)で第15回山本七平賞を受賞。平成20年(2008)に論文「天皇は本当に主権者から象徴に転落したのか?」で第2回「真の近現代史観」懸賞論文・最優秀藤誠志賞を受賞