「悩み 溶かすか、戦うか!? 」天外伺朗

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天外伺朗

運命を受け入れる

「運命を変えたい」という表現の中には、「いい運命」と「悪い運命」という価値観が潜んでいます。

「運命を変えよう」と思った途端、私たちはいまの自分を否定することを意味しているのです。

もし自分の身に起きる出来事すべてを「いい運命」として受け入れることができるのなら、宇宙の見えない流れに身を委ねられ、自然に生きていけるようになります。

 

悩むために生まれてきた

人間にとって悩むことは避けることができない宿命であり、悩むために生れてきたといっても過言ではないでしょう。

悩みは人によって様々ですが、あらゆる悩みのルーツをたどると、一つの要因に行き着きます。

その要因を象徴するのが、「バース・トラウマ」(出生の瞬間や子宮内での記憶・体験による心の傷)であります。

さらにこの奥深くには、宇宙から分離している「セパレーション感覚」があります。

瞑想法などの宗教的修行法をきわめていくと、宇宙との一体感が増し、同時に人は悩みから脱却していくと言われます。

それを仏教では「空」、ヒンドゥー今日では「ブラフマン」という概念で説いています。

これはあらゆる宗教や哲学のベースになっている基本コンセプトなのです。

 

21世紀の社会のリーダ

意識の成長・進化には、階層的な構造があり、そのステップごとに典型的な悩みのパターンも対処法も異なってきます。

自分の意識レベルは、初期自我、中期自我、後期自我ののどこに属するのかは、自分の悩みのパターンで分析することでわかります。
21世紀の社会のリーダは、セパレーション感覚を減らし、宇宙との一体感を持つ人へと自然に移行していくでしょう。

それが人類の流れであり、社会の進化なのです。

セパレーション感覚を減らすためには、瞑想などのトレーニングをしなくてはなりません。

 

成功哲学では幸せになれない

アメリカンドリームで人は幸せになれないのではないでしょうか。

アメリカンドリームの成功者たちは何不自由ない暮らしをしているように見えますが、本人たちの精神状態は深刻な危機にあるのです。

プラス思考は、「プラスの側面に注目し、いいイメージを持ち続けていれば、人生は成功する」という思想です。

「成功哲学」とも呼ばれ、アメリカの富豪たちが信奉し、一種の教義になっています。
しかし、プラス思考には見過ごすことのできない、大きな落とし穴があります。

人間の感情を理性でコントロールすることは不可能だからです。

理性と感情の葛藤は、それほど単純に解決できるものではないのです。

目的意識を強く持つことで、私たちの視野は狭まり、宇宙の流れをつかむことが苦手になってしまうのです。

 

宇宙との一体感を取り戻す

本当のプラス思考とは、マイナス思考をしている自分を丸ごと認めるところから始まるのです。

私たちはいままでも、「涅槃」に近い状態を日常的に体験しています。

その端的な例が、「まどろみの中」にあるときです。

そのような状態の時には、私たちは自分の無意識とつながっていて、大いなる宇宙との一体感を取り戻しているのです。

大切なのは、そのような一体感を意識的に取り戻していくことです。

伝統的な瞑想法、黙想、祈り、禅、聖なるダンス、自然の中での荒行といった修行は、すべて修行者に宇宙との一体感を味あわせ、個を超えたレベルに誘うトレーニングとして受け継がれてきたものでした。

宗教における音楽、美術、儀式、喜捨などの風習も、私たちの意識を成長・進化させる方向を示そうとした取り組みなのです。

 

 

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天外 伺朗(てんげしろう)
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本名・土井利忠。1942年生まれ。ソニー(株)上席常務、工学博士。フィリップス社と組んだCDの共同発明者。ワークステーション『NEWS』やエンターテイメントロボット『AIBO』ヒューマノイドロボット『QRIO』などの開発責任者をつとめた。その経験を生かして科学技術評論、人材開発論にも健筆を振るう。1997年より、理想的な死に方につながる、光り輝く日々を追求する人たちのためのネットワーク『マハーサマディ研究会(2004年よりホロトロピック・ネットワークと改称)』を主宰

 

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